初期過渡リアクタンスと過渡リアクタンス
初期過渡リアクタンス,過渡リアクタンスという言葉は,大学や高専で電気機器工学を学んだ方や電験2種以上の勉強をしたことがある方は何度も聞いたことがある言葉だろう.ただ,これらのリアクタンスが一体何なのかということについて詳しく記した書物は余り多くないので,これらをしっかりと説明しようとすると,案外手こずる人は多いかもしれない.
今回は,初期過渡リアクタンスと過渡リアクタンスの意味とその物理的解釈について徹底攻略するべく,2つの動画レクチャーを紹介する.最初の動画は初期過渡リアクタンスと過渡リアクタンスの前編ということで,これら2つのリアクタンスが何なのか,直感的に導入するところから始めたい.
講義1.初期過渡リアクタンス・過渡リアクタンス(前編)
短絡電流の時間変化を追うことで,同期機の等価的なリアクタンスが時間の経過に従って変化することが理解できたと思う.短絡事故に限らず,比較的時定数の短い過渡現象においては同期リアクタンスは利用できず,この代わりに時定数に応じて初期過渡リアクタンスや過渡リアクタンスを用いるのである.
次の2つ目のレクチャーにおいては,同期機のどのような電磁気学的カラクリによってこれら2つのリアクタンスが導入されるのかを説明している.
講義2.初期過渡リアクタンス・過渡リアクタンス(後編)
過渡現象の時定数が十分短い(一般的なタービン発電機の場合で数サイクル以下)の場合は初期過渡リアクタンスを,過渡現象の時定数が数サイクル~1秒程度の場合は過渡リアクタンスを適用するとよいことがわかった.そしてこのように時定数によって同期機のリアクタンスが変化する理由としては,同期機には固定子巻線・回転子巻線・ダンパ巻線の3種類のコイルがあり,それぞれが異なる漏れリアクタンスと寄生抵抗を持っているためであることが説明されている.
過渡的な現象はベクトル図では説明できない.同期リアクタンス自体が一定とは見なせないからである.過渡現象を正確に計算したいと思ったら,\(d\)-\(q\)-\(0\)変換をベースにした同期機の基本方程式を用いる必要がある.これら過渡リアクタンスも当然ながら\(d\)-\(q\)-\(0\)変換を出発点に導出されるものであり,2番目の動画ではこの辺りの関係も直感的に説明されている.
この項の内容に関する,より詳細で完全な解説は,
【徹底解説 電動機・発電機の理論】の§4-3(P.204~P.208)にて展開されています.是非ご参照を!!
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