いろいろな光源
次の記事からいろいろな光源の物理的原理などを解説していくが,その前に世の中に出回っている照明機器の光源にはどのような種類があり,それぞれどのような特徴を持っているのか,ここで簡単におさらいしておこう.
普段我々が見かける照明機器は,以下の図1に示すようなグループ分けができる.
図1.一般的な照明機器のグループ
時代順に並べるならば,白熱電球→放電管→液晶・半導体となる.このそれぞれは発光効率や演色性,色温度や寿命,コスト,使い勝手などで様々な長所・短所を持つ.以下の図2において,省エネの要求からも大変重要となる発光効率と,一般的に発光効率が良い光源が苦手とする演色性について,それぞれの光源の間の比較を行ってみる.
図2.様々な光源の演色性と発光効率
まず,演色性が最大(Ra:100)なのが白熱電球である.これは,白熱した物体から放射される光のスペクトラムは完全に連続であり,あらゆる色味を表現できるということを表している.一方で発光効率がずば抜けてよい低圧ナトリウムランプは逆に演色性が全くない(Ra:0またはNA).これは,低圧ナトリウムランプからの光は589nm(橙色)の波長1本のみであり,その光源の元ではあらゆる色が橙色の明暗になってしまい,色味は完全に失われる.これは例えばトンネル内でカラーの本を見たら理解できる.比較的演色性がよく,効率も高い光源はメタルハライドかLEDである.特に一般家庭や小規模照明においてはその扱いやすさ(寿命,点灯時間,制御回路)などから,LEDの普及が著しい.
次に示すのは,光源の発光原理に応じたグループ分けである.
図3.発光原理のグループ分け
この詳細については,次の記事以降に詳しく述べたいが,発光原理は大きく分けて熱放射か,それ以外(ルミネセンス)かに分けることができる.これらのカテゴリーを図1に適用すると,以下の図4のように表される.
図4.一般的な照明機器の発光原理グループ分け
図4から,半導体や液晶などは電界により電子状態を励起して発光させており,その原理はエレクトロルミネセンスと呼ばれている.ここに演色性を高めるため蛍光物質を塗りつけた場合,そこは光により新たな光を励起する,フォトルミネセンスと呼ばれる原理を用いていると言える.また,放電管による発光は,放電発光と呼ばれる発光原理に加え,蛍光塗料などを用いた場合フォトルミネセンスも利用していると言える.
これらの原理ごとに,大まかなスペクトルの特徴がみられるので次の図5,図6に示す.
図5.白熱電球・蛍光灯・白色LEDのスペクトル
まず図5は白熱電球,蛍光灯,白色LEDのスペクトルを比較している.白熱電球は次の記事で説明する通り,連続スペクトラムだが波長が長い領域が強く,赤外領域に殆どのエネルギーをつぎ込んでいることがわかる.一方蛍光灯や白色LEDは赤外領域の発光は少ないので効率はよさそうだが,発光スペクトルにピークが見られ,色味に偏りが起きていることがうかがえる.これは演色性の劣化を起こす.ただ,蛍光塗料の工夫などで,だいぶ均一にスペクトルを分散できているので演色評価度(Ra)も最近では80以上が一般的になっている.
続いて,図6は低圧放電と高圧放電のスペクトルの特徴を比較している.
図6.低圧放電・高圧放電のスペクトル
例えばナトリウムランプの場合,低圧であれば純粋なNa原子の電子軌道のエネルギー準位により決まる単色光を発光することになり演色性は最低である.ただ,高圧にすることでアーク放電の熱励起やその他の励起モードも発光に参加してきて,スペクトラムに幅が生まれるようになる.これで演色性は改善するが,熱損失などが増えるため効率は劣化する.
次からはこれらの発光原理を,もっと物理的・化学的に突っ込んで説明していく.
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