直流電動機の始動方式
いままでの議論は直流電動機が定常運転しているとき(回転速度が最終値に落ち着いた状態)を考えてきたが,実際は電動機の速度は0から始まる.回転速度と逆起電力は比例関係にあった(磁束が一定のとき)ので,電動機が始動するときは逆起電力が0になっている.ということは直流電源からは非常に大きな電流が流れ込んでしまうのである.これは始動電流といって,ただ単純に電源投入した場合(直入れ始動),定格電流の10~30倍にもなる.この始動電流を低く抑えるために,いくつかのアプローチがあるので紹介したい.以下の図1を見ていただきたい.
図1.代表的な直流電動機の始動法
まず図1の一番左側は,比較のため何も施していない”直入れ始動法”を示している.単純に直流電源を投入するものである.一方真ん中は抵抗始動法と呼ばれ,直流電源と電動機との間に可変抵抗を設け,始動時にその抵抗値を大きくしておき,回転速度が上がるに従って段階的に低抵抗にしていく方式である.そして一番右側は可変電源始動法と呼ばれ,直流電源の電圧を始動時に0近くにしておいて,回転速度の上昇に合わせて徐々に電源電圧を上昇させ,定格電圧に近づけるという方式である.
次の図2は,図1で示した始動法のそれぞれについて始動電流の時間変化がどうなっているのかを示している.
図2.代表的な始動法における始動電流
まず一番左側は直入れ始動による始動電流で,立ち上げ時にもっとも大きな電流(定格電流の10~30倍と言われる)が流れ,それから定格電流へと落ちていく.二番目の真ん中の図は,抵抗始動法による始動電流を表しており,抵抗値の段階的な切り替えに応じて電流量がのこぎり的に変化し,最終的に無抵抗になって定格電流に至る.そして最後の右側は可変電圧始動時の始動電流であり,用途に適した始動電流・始動トルク特性が得られるように,滑らかに電圧を制御できる方式である.これは次の記事である”直流電動機の速度制御方式”においても活躍している方式なので,詳しくはそちらを参照されたい.
この項の内容に関する,より詳細で完全な解説は,【徹底解説 電動機・発電機の理論】の§3-4にて展開されています.
是非ご参照を!!
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