同期機のベクトル図へのPU法適用

 

 まず,PU(Per Unit)化とは何だったかを思い出してみよう.PU化とは,PU法の単位に電気量を変換することである.

 例えばある電圧をPU法の単位に変換するときには,\(1\)[p.u]が何ボルトなのかを知る必要がある.もし\(1\)[p.u.]が\(100V\)ならば,\(110V\)は\(1.1\)[p.u.]となる.そしてPU法の特徴としては,\(1\)[p.u.]は場合に応じて変わる(自由に決められる)のである.通常は\(1\)[p.u.]の値はその系の定格値が適用される.つまり,定格電圧\(66\)[kV]の送電線のPU化の際には,\(1\)[p.u.]を\(66\)[kV]として計算するのが一般的である.このような\(1\)[p.u.]の値を基準値と呼ぶ.そしてPU化された後の値は基準値からの倍率そのものを表しているので,例えば\(66\)[kV]の\(0.9\)倍の電圧値は,基準値が\(66\)[kV]ならばPU法で表すと\(0.9\)[p.u.]となる.

 それでは同期機のベクトル図をPU化してみよう.PU化するときには上記の議論からも明らかなとおり,まずは基準値を決める必要がある.ベクトル図というのは1相分の電圧を表していたので,ベクトル図の基準値にふさわしいのは相電圧の定格値であろう.線間電圧の定格値を\(V_n\)とすると,相電圧の定格値は

$$\frac{V_n}{\sqrt{3}} \tag{1}$$

 となる.これがベクトル図のPU化の基準値になる.というわけで,ベクトル図の電気量を[p.u.]に変換するべく,下記の図1のように上記(1)の基準値で割ってやる.

図1.ベクトル図のPU法適用

 

 ここで,PU化された端子電圧\(\dot{\tilde{V}}\),起電力\(\dot{\tilde{E}}\),電機子電流\(\dot{\tilde{I}}\)を以下のように定める.

$$\dot{\tilde{V}}\equiv\frac{\sqrt{3}\dot{V}}{V_n},\dot{\tilde{E}}\equiv\frac{\sqrt{3}\dot{E}}{V_n},\dot{\tilde{I}}\equiv\frac{\dot{I}}{I_n} \tag{2}$$

 電圧に関しては相電圧を,電機子電流に関しては定格相電流を,それぞれ基準値においている.これを用いて図1の右側は次の図2のように書き換えることができる.

図2.PU法を用いた電気量で表現

 

 これでだいぶベクトル図のPU法適用のゴールは近づいた.唯一同期リアクタンス部分だけがPU法適用前の電気量で表された部分になってしまっていたので,そこも以下のように\(\tilde{X_s}\)とおいてみる.

$$\tilde{X_s}\equiv \frac{\sqrt{3}X_sI_n}{V_n} \tag{3}$$

 この置き換えをすることで,ついにベクトル図は次の図3のように,PU法が適用された電気量のみで表すことができるようになる.

図3.同期リアクタンスもPU法で表現

 

 これでベクトル図のPU化は完了した.PU化された端子電圧\(\dot{\tilde{V}}\),起電力\(\dot{\tilde{E}}\),電機子電流\(\dot{\tilde{I}}\),同期リアクタンス\(\tilde{X_s}\)について,PU化前と完全に同じベクトル図が描ける.そしてこれらのPU化された量は式(2)や式(3)によって求められるのである.PU化の基準値は定格値だったので,このPU化されたベクトル図のベクトル長さが\(1\)ならば,定格に等しく,端子電圧\(\dot{\tilde{V}}\)や起電力\(\dot{\tilde{E}}\),電機子電流\(\dot{\tilde{I}}\)のベクトルの長さ一般的には\(1\)に近い\(1\)以下の値を取る.そして\(\tilde{X_s}\)の値は水力発電の同期発電機などでは\(0.6\)~\(0.8\),火力発電の同期発電機などでは\(1\)前後の値を取る.

 

 

 

 

この項の内容に関する,より詳細で完全な解説は,

【徹底解説 電動機・発電機の理論】の§6-1にて展開されています.
是非ご参照を!!

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