DC-DCコンバータの概要

 

 DC-DCコンバータというのは,ある直流電源から,異なる電圧の直流電源を構成するための電源回路のことである.この用途としては,電子機器の回路電源から鉄道などの動力系まで,広範にわたる.

 この記事では,まずDC-DCコンバータが電圧変換をどのように達成しているのか,大きく3つのアプローチがあることを示し,それぞれの特徴を簡単に説明するところから始めていこう.まず1つ目のタイプである,リニアレギュレータから紹介する.

 

Type1:リニアレギュレータ

 

 リニアレギュレータというのは,オペアンプを用いた負帰還回路であり,下記の図1のような回路構成になっている.

 

図1.リニアレギュレータ

 

 この回路の特徴としては,出力電圧にリップルがなく低ノイズ電源が達成できるので,ノイズに弱いアナログ回路などに適している.特に\(V_{in}\)が動的に変動しても,このフィードバック系が十分素早く動ける場合は\(V_{out}\)は一定に保たれる.つまりこのレギュレータ自身が電源ノイズのフィルターとしても機能するのである.このような理由から,特別に低ノイズ電源が必要なアナログ回路にはわざわざこのリニアレギュレータを電源に挿入することも行われる.

 このように電源ノイズ低減にも使えるリニアレギュレータだが,大概の回路では使われることがない.なぜなら電力変換効率が低いからである.図1中のMOSFETにおいて\(V_{in}-V_{out}\)という大きな電圧降下が起きており,その分が丸々電力ロスになっているのである.例えば\(5V\)から\(3V\)を作るときは,\(2V\)分の電力である\(40\%\)は丸ごとドブに捨てることになる.そのため低ノイズよりも省電力を優先する場合,このリニアレギュレータは使われず,次から説明するチョッパ回路スイッチングレギュレータが用いられるのである.

 

Type2:チョッパ回路

 

 次の図2に示すのは,チョッパ回路の基本的な回路構成である.

 

図2.降圧チョッパ回路(左)と昇圧チョッパ回路(右)

 

 図2に示しているチョッパ回路は,電圧\(V_{in}\)の直流電源からスイッチを介して間欠的に電流をもらうことで,異なる電圧\(V_{out}\)の直流を生成している.左側の降圧チョッパ回路は電圧を下げる回路となっており,\(V_{out}<V_{in}\)を満たす.一方右側の昇圧チョッパ回路(右)は電圧を上げることができ,\(V_{out}>V_{in}\)となっている.なぜこの回路が電圧を上げたり下げたりできるのか,そのシンプルな物理的イメージは次の記事で説明する.

 この回路の特徴としては,リニアレギュレータに比較して電力変換効率が高い点だろう.インダクタや半導体スイッチなどでの電圧降下やスイッチングの損失などがなければ,原理的には効率\(100\%\)である.実際の効率はアプリケーションにもよるが電力用途においては\(90\%\)以上は堅い(電子回路用途では\(90\%\)前後か,切ることもある).ただし,スイッチングに伴う電磁ノイズの発生や出力電圧の周期変動(リップル)は避けられない欠点であるため,これらによってシステムが致命的な影響を被らぬように十分注意する必要がある.このチョッパ回路は電子回路内の直流電圧変換から,鉄道などの動力系電源の制御まで広く用いられているものである.使用する素子や制御方法,動作原理などはこの後の記事で詳しく説明していく.

 次は,直流電圧変換の3つ目のアプローチであるスイッチングレギュレータを説明しよう.

 

Type3:スイッチングレギュレータ

 

 スイッチングレギュレータは,昇圧・降圧しやすい交流に一旦変換し,その交流をトランスを用いて昇圧・降圧後,再度直流に戻す方式である.つまり基本的な構成は次の図3のようになる.

 

図3.スイッチングレギュレータ

 

 まずインバータにおいて,周期的に電流の極性を反転させ,交流電流を作る.それを変圧器に加え,昇圧(または降圧)する.最後に昇圧(または降圧)された交流をコンバータ(整流器)によって直流に戻し,異なる電圧の直流を生成する.

 実際に活躍しているほぼすべてのDC-DCコンバータは,上記の3パターンのいずれかに該当する.リニアレギュレータは低ノイズ電源を必要とする一部の電子回路において適用される程度なので,これからの記事では電力用途を意識して後半の2つ,つまりチョッパ回路とスイッチングレギュレータに的を絞って詳細の解説をしていくことにしよう.

 

また,DC-DCコンバータの実機についてはRSコンポーネンツのwebで閲覧・購入可能である.
実際のデバイスについて感触を得る好機会として参照をお勧めしておこう.

 

 

 

 

この項の内容に関する,オリジナル演習問題を絡めた詳細な解説は,

【入門演習 パワーエレクトロニクス】第4章にて展開されています.是非ご参照を!!

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