問題2(力学,慣性系・非慣性系)の解答

 

 

問題:

 

 下図のように,幅が\(w\)で高さが\(h\)の四角い荷物がある.この荷物が速さ\(v\)で流れるベルトコンベアに鉛直に落とされて乗るときの,この荷物が後方に倒れないための\(v\)に許される最大速度\(v_{max}\)を求めよ.ただし荷物は密度が一様であり,ベルトコンベアとは完全非弾性衝突して着地するものとする.また,ベルトコンベアとの接触面(ないしは接触点)は全く滑らないと仮定せよ.また,重力加速度を\(g\)とする.

 

 

 

 

解答:

ベルトコンベアに荷物が落ちた瞬間の様子を下記に示す

 

 

 

 

 

完全非弾性衝突でベルトコンベア上に落下するので,荷物の速度の垂直成分は\(0\)となる.次に荷物がベルトコンベアに接触した後の荷物の挙動を示したものが次の図である.

 

 

 

 

 

荷物の左下の一点においてベルトコンベアと接触しており,その点がベルトコンベアに対して一切滑らずに荷物が反時計回りに回転していく.そして,その回転に従って荷物の位置エネルギーが上がっていき,最大角度を迎えたあとに今度は時計回りに回転を始めて荷物は倒れずに立ち直っていく.それでは,荷物が倒れない限界においては,この最大角度はどうなるのか,次の図に示した.

 

 

 

 

 

この荷物が後方に倒れないために許される最大速度\(v_{max}\)においてベルトコンベアが運転した場合に荷物が最大角度を迎えたとき,上記の図の通り荷物の重心がベルトコンベアの接触点に対して垂直を成す状態となる.この図の状態において蓄えられた位置エネルギー\(U\)は,この荷物の質量を\(M\)とすれば

$$ U=Mg\frac{1}{2}\left({\sqrt{h^2+w^2}-h}\right) \tag{1}$$

 

ベルト上の視点(非慣性系)に立てば,荷物がベルトコンベア上に着地した直後の運動エネルギー\(K\)は

$$ K=\frac{1}{2}Mv_{max}^{2} \tag{2}$$

 

非慣性系においては最大角度を迎えたとき,荷物は静止している.つまり,式(2)の運動エネルギーがそのまま式(1)の位置エネルギーに変換されたと言えるので,(1)=(2)より

$$ \frac{1}{2}Mv_{max}^{2}=Mg\frac{1}{2}\left({\sqrt{h^2+w^2}-h}\right) $$

これで,荷物が後方に倒れないために許される最大速度 \(v_{max}\)が求まる.

$$ v_{max}=\sqrt{g\left({\sqrt{h^2+w^2}-h}\right)} $$

 

 

 

 

講評:

 

 ベルトコンベアの視点に立てば,速さ\(v\)で左向きに進行している荷物が突然左下角を押さえられる形で進行を止められるという物理系に等しい.すると荷物は反時計回りに回転していき,運動エネルギー\(\frac{Mv^2}{2}\)が位置エネルギーに100%変換された角度で静止する.つまりエネルギー保存の法則を使えばあっさり解けてしまうのである.しかし,なぜロスなく位置エネルギーに変換されるのか,そして位置エネルギーを重心の高さにできるのはなぜなのかなど,高校生にとっては色々悩めるポイントが詰まった問題ではなかろうか.大学1年になれば剛体の力学方程式の意味をしっかり理解することで,この問題を時間発展含めて正確に解くことができるわけだが,高校生の段階から「エネルギー保存」の背後にある力学的イメージをしっかり探る癖をつけて欲しいと思い,この問題を作問した.