問題8(漸化式と極限,(1)レベル2.5 (2)レベル4.5)の解答

 

 

問題:

 

 \(0\)以上の整数\(n\)について定義された負でない整数の数列\(a_{n}\)が次を満たすとする:

$$ a_{n}\geq{1}\;\;\left(n\geq{1}\right)$$
$$ a_{m}+a_{n}=a_{mn+m+n},\,\,\left({m}\geq{0},\,{n}\geq{0},\,{m,n}\in\mathbb{Z}\right)$$

(1)\(a_{2013}\)の最小値を求めよ.

(2)次の条件Iを満たすとき,\(a_{n+1}<a_{n}\)となる\(n\)が存在することを示せ.

 

条件I:\(0\leq{n}\leq{2013}\)を満たすすべての\(n\)について,\(a_{n}\)も有界となる.

 

 

 

解答:

 

まず,問題文の数列等式を簡単化する.\(0\)以上のすべての整数\(n\)について\(b_{n+1}=a_{n}\)とすると,

$$ b_{m+1}+b_{n+1}=b_{mn+m+n+1}\,\,\left({m}\geq{0},\,{n}\geq{0},\,{m,n}\in\mathbb{Z}\right)$$

となる.ここで\(M=m+1\),\(N=n+1\)とおくと

$$ b_{M}+b_{N}=b_{MN}\,\,\left({M,N}\in\mathbb{N}\right) \tag{1}$$

この式(1)を使って,(1)と(2)を解いていく.

 

(1)式(1)を使うと

$$ a_{2013}=b_{2014}=b_{2\cdot{19}\cdot{53}}=b_{2}+b_{19}+b_{53} \tag{2}$$

と変形できる.\(2\),\(19\),\(53\)はすべて素数なので,これ以上は分解できない.\(n\geq{1}\)について\(a_{n}\geq{1}\)だったので,\(b_{n}\)は\(n\geq{2}\)について\(b_{n}\geq{1}\)である.よって式(2)より,\(b_{2}=b_{19}=b_{53}=1\)のとき\(a_{2013}\)は最小となり,最小値は\(3\)

 

(2)背理法で証明する.つまり,題意の条件Iを満たし,\(a_{n+1}<a_{n}\)となる\(n\)が存在しないとする.

\(a_{n}\)は整数であったから,\(a_{n+1}<a_{n}\)でないとすると,

$$ a_{n+1}\geq{a}_{n}\,\,\left(n\geq{0},\,\,{n}\in\mathbb{Z}\right) \tag{3}$$

がすべての\(n\)について成り立つ.\(b_{n+1}=a_{n}\)であったから,

$$ b_{n+2}\geq{b}_{n+1}\,\,\left(n\geq{0},\,\,{n}\in\mathbb{Z}\right) $$

\(N=n+1\)として

$$ b_{N+1}\geq{b}_{N}\,\,\left(N\geq{1},\,\,{N}\in\mathbb{Z}\right) \tag{4}$$

すべての自然数\(N\)において上記の式(4)が成り立つ.これから式(1)と式(4)を満たすと,条件Iに反するということを示していく.

ある自然数\(p\)をおく.この自然数\(p\)から\(k=[p\log_{2}{3}]\)(ただし\([]\)はガウス記号)で導かれる自然数\(k\)を定義すれば,

$$ k\leq{p\log_{2}{3}}\leq{k+1} $$

となるので,これらを\(2\)の指数の肩に乗せることで

$$ 2^{k}\leq{3}^{p}\leq{2}^{k+1} \tag{5}$$

が成立する.そして式(4)がすべての自然数\(N\)で成り立っていたので

$$ b_{2^{k}}\leq{b}_{{3}^{p}}\leq{b}_{{2}^{k+1}} \tag{6}$$

となる.ここで式(1)を使うと,

$$ k{b}_{2}\leq{p}{b}_{3}\leq\left({k+1}\right){b}_{2} \tag{7}$$

と変形できる.この式を\(pb_{2}\)で割ってあげると

$$ \frac{k}{p}\leq\frac{{b}_{3}}{{b}_{2}}\leq\frac{k+1}{p} \tag{8}$$

ここで自然数\(p\)はいくつでもよかったので,\(p\rightarrow\infty\)の極限を取ってやる.

$$ \lim_{p\rightarrow\infty}\frac{k}{p}\leq\frac{{b}_{3}}{{b}_{2}}\leq\lim_{p\rightarrow\infty}\frac{k+1}{p} \tag{9}$$

\(k=[p\log_{2}{3}]\)であったから,

$$ \lim_{p\rightarrow\infty}\frac{k}{p}=\lim_{p\rightarrow\infty}\frac{k+1}{p}=\log_{2}{3} \tag{10}$$

式(9)と式(10)よりはさみうちの定理により

$$ \frac{{b}_{3}}{{b}_{2}}=\log_{2}{3} \tag{11}$$

よって

$$ 2^{{b}_{3}}=3^{{b}_{2}} \tag{12}$$

\(b_{2}\)や\(b_{3}\)は条件Iより有限の自然数であったが,式(12)は満たせないので矛盾.よって背理法により「条件Iを満たすとき,\(a_{n+1}<a_{n}\)となる\(n\)が存在する」ことが示された.

 

 

 

 

講評:

 

 (1)は漸化式の変形ができれば簡単な問題である.そしてその変形も\(mn+m+n+1=\left({m+1}\right)\left({n+1}\right)\)を用いるという,漸化式の変形としてはありがちなパターンである.例えば\(a_{m+n}=a_{m}a_{n}+a_{m}+a_{n}\)という漸化式が出てきたら,まず両辺に\(1\)を足して\(a_{m+n}+1=\left({a_{m}+1}\right)\left({a_{n}+1}\right)\)とし,\(b_{n}=a_{n}+1\)とすればよい.ただ今回は,数列の値そのものではなく添え字にこの操作を行うという点において戸惑う人が結構いたかもしれない.(1)では簡単な式変形テクニックを問うてみた.

 (2)は,かなりの難問であったと思う.数列\(b_{n}\)が満たすべき式(1)を考えると,数列\(b_{n}\)は対数的な性質を持つことがわかる.これを満たしながら単調増加であるような\(b_{n}\)は,\(b_{n}=C\log{n}\)を考えることができる.しかし題意より\(b_{n}\)は整数であったから,これは不適である.では,式(1)を満たしながら単調増加になるような整数の数列\(b_{n}\)は存在しないのだろうかという疑問が出てくる.そこでこの証明問題を出題した.上記以外の種名方法も2,3あると思われるので,見つけたらご投稿願いたい.