問題1(確率と積分の応用,ビュフォンの針の発展問題,レベル3)の解答

 

 

問題:

 

 無限平面上に間隔\(1\)の横線と間隔\(1\)の縦線が直交しながら無限に並んでいる。ここに長さ\(1\)の針を投げたとする。針の着地点や角度はランダムであるとして,その針が横線と交差していた場合における、縦線と交差している条件付き確率を求めよ。

 

 

 

 

解答:

 

まず,横軸を\(x\)軸,縦軸を\(y\)軸と置こう.そして針が\(x\)軸となす角を\(\theta\left(0\leq\theta\leq\pi\right)\)と置く.すると,長さ\(1\)の針が\(y\)軸に射影されたときの長さは\(\sin{\theta}\)と表される.そして針が着地する座標は任意であったから,針と\(x\)軸とのなす角が\(\theta\)のときの,間隔\(1\)の横線が針と交差する確率\(p_{h}\left(\theta\right)\)は

$$ p_{h}\left(\theta\right) = \sin{\theta} \tag{1}$$

と表される.しかし実際の\(\theta\)は任意であり,\(0\sim\pi\)のどの値も均等にとり得る.\(\theta\in\left[\theta_{0},\theta_{0}+d\theta\right]\)となる確率は,

$$ \frac{d\theta}{\pi} \tag{2}$$

であるから,\(\theta\in\left[\theta_{0},\theta_{0}+d\theta\right]\)となりつつ針が横線と交差する確率は,式(1)と式(2)の積であり,

$$ p_{h}\left(\theta\right)\frac{d\theta}{\pi} = \sin{\theta}\frac{d\theta}{\pi} \tag{3}$$

となる.これを\(\left[0,\pi\right]\)の区間で積分してやれば,針が横線と交差する確率となる.

$$ \frac{1}{\pi}\int_{0}^{\pi} \sin{\theta}d\theta = \frac{2}{\pi} \tag{4}$$

 同様にして,針が横線・縦線両方と交差する確率も求められる.針と\(x\)軸とのなす角が\(\theta\)のとき,長さ\(1\)の針が\(y\)軸に射影されたときの長さは\(\left|\cos{\theta}\right|\)と表されるので,\(x\)軸とのなす角が\(\theta\)のときの針が間隔\(1\)の縦線と交差する確率\(p_{v}\left(\theta\right)\)は

$$ p_{v}\left(\theta\right) = \left|\cos{\theta}\right| \tag{5}$$

となる.そして針が着地する\(x\)座標と\(y\)座標は任意であり,互いに独立であるから,\(x\)軸とのなす角が\(\theta\)のときの針が間隔\(1\)の横線縦線両方と交差する確率は単純に式(1)と式(5)の積となり

$$ p_{h}\left(\theta\right){p}_{v}\left(\theta\right) = \sin{\theta}\left|\cos{\theta}\right| \tag{6}$$

\(\theta\)は\(0\)から\(\pi\)までの値を取り得るので,上記と同様に積分を実行し,

$$ \frac{1}{\pi}\int_{0}^{\pi} \sin{\theta}\left|\cos{\theta}\right|{d}\theta=\frac{1}{\pi} \tag{7}$$

 

ここで,針が横線と交差しているときの,縦軸とも交差している条件付き確率は,「(横線縦線両方と交差する確率)÷(横線と交差する確率)」で表すことができるので,式(7)を式(4)で割ってやればよく,

$$ \frac{\frac{1}{\pi}}{\frac{2}{\pi}}=\frac{1}{2} \tag{8}$$

 

よって,針が横線と交差しているときの,縦軸とも交差している条件付き確率は,\(\frac{1}{2}\)である.

 

 

 

講評:

 

 これは,「ビュフォンの針」という問題をベースに,条件付き確率の理解を問うた発展問題である.「ビュフォンの針」とは,「もし床に多数の平行線を引き、そこに針を落すならば、どれかの線と針が交差する確率はどのようになるか?」という問題であり,その確率は上記の解答にあるような角度\(\theta\)の積分を実行することで求められ,針の長さが平行線の間隔と等しいとき\(\frac{2}{\pi}\)となる.

 ここで高校生にとっては,角度\(\theta\)という連続量に対する確率密度を考えるということに若干の飛躍があったかもしれない.「縦線や横線と交差する確率を求めるためには針が着地したときの角度\(\theta\)に着目すればよい」ということに気づき,角度\(\theta\)に対する積分を実行することで横線と交差する確率などを求めることができるという発想に至る必要がある.しかも,積分で確率を求めるという発想がクリアできたとしても,さらに条件付き確率の概念もしっかり理解していなければこの問題は解けない.つまり,2つの関門を潜り抜けて初めて解答できる問題なので,高校生にとってはレベル3を若干超える難易度だったかもしれない.しかし,確率・統計を履修した理系大学生ならば確実に仕留めてほしい問題である.